事業経営・ビジネス

実地指導とは?準備すべき書類や行政処分を受けないための対策を紹介

監修者森永 大樹

この記事では介護領域における実地指導とはどんなものなのかを詳しく紹介していきます。


「実地指導って何をするんだろう?」
「事前に準備しておくことはなんだろう?」
「実地指導に引っかかってしまったらどうなるんだろう?」


こんな悩みがある人はぜひこの記事を読んでください。

読み終わった頃には実施指導についての悩みが消え、不安なく当日を迎えられます。

最後までご覧ください。


実地指導とは

実地指導とは行政の担当者が介護事業所を訪問し、適正な事業運営が行われているか確認するものです。

サービスの質の確保や保険給付の適正化を目的として行われます。


実施指導はすべての事業所において定期的に行われるものです。

問題があったから行われるのでなく、問題がないか確認するためのものになります。

実施日の1ヶ月前までには対象の介護事業所に対して通知があります。


実地指導と監査の違い

実施指導と間違われやすいものとして監査があります。

しかし、これらには大きな違いがありますので注意しましょう。


大きな違いとしては問題があった場合に行われるのか、そうではないかということです。

先ほど説明したように、実地指導は問題がないか確認するために行われます。

一方で、監査は問題があった場合に行われるものになります。

そのため、実施指導を受けた介護事業所で何か問題があった場合は監査に移行する場合もあります。


監査の対象となる問題には、以下のようなものがあります。

  • 運営指導での情報
  • 通報、苦情、相談などに基づく情報
  • 国保連、地域包括支援センターなどへ寄せられる苦情
  • 国保連、保険者からの通報情報介護サービス情報の公表の拒否などの情報


実施指導から監査へと変更となる契機については以下の内容になります。

  • 人員、施設設備、運営基準に従っていない状況が著しいと認められる場合又はその疑いがある場合
  • 介護報酬請求について不正又は不正の疑いがある場合
  • 不正の手段による指定等又はその疑いがある場合
  • 高齢者虐待等がある又はその疑いがある場合

出典:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル


実地指導の内容

実施指導の内容には「運営体制指導」「報酬請求指導」の2つがあります。

聞き取りや書類の確認などそれぞれが異なった方法で実施されるため、事前の準備が必要になります。

介護保険施設等 運営指導マニュアルに明記されている内容について記載しましたのでご確認ください。


運営体制指導

運営体制指導は介護事業所の運営体制が基準を満たしているかの確認をしていくものです。

人員や運営に関する確認項目および確認文書に基づき行っていきます。

厚生労働省が定める運営指導の内容は以下の通りです。

  • 従業員の員数及び勤務体制の確保
  • 非常災害対策
  • 事故発生の防止及び発生時の対応
  • 地域との連携

報酬請求指導

報酬請求指導は各サービスが基準に基づき適正に介護報酬の請求が行われているか確認するものです。

介護報酬請求に関する文書の取扱いが不十分な場合は改善指導が行われます。

必要に応じて監査に移行する場合もあるため、注意が必要です。

厚生労働省が定める運営指導の内容は以下の通りです。

  • 基本報酬
  • 加算及び減算


実地指導の流れ

実際に行政からの通知が届いてから実地指導がどのような流れで進んでいくのか解説していきます。

通知が届いてから実地指導日までには意外に多くの準備が必要です。

当日までの流れを知り、直前になって慌てないように準備しておきましょう。


大まかな流れは以下の通りです。

  • 行政からのお知らせを確認する
  • 書類を準備する
  • 実地指導の場所を確保する
  • 参加する職員に内容を共有する

それぞれについて詳しく解説していきます。


行政からのお知らせを確認する

実施指導日の約1ヶ月前に行政から通知が届きます。

その中に以下の内容が記載されている場合があるため、忘れずに確認しましょう。

  • 実施日時
  • 当日の担当者
  • 実施指導の目的
  • 事前に提出すべき書類

実施日に施設行事や感染症の流行などがあり、延期が必要な場合は速やかに相談するようにしましょう。

書類を準備する

実地指導当日までに準備が必要な書類があります。

通知文をよく確認して事前提出書類を揃えるようにしましょう。

提出期限は、実地指導日の1〜2週間前が一般的です。


実施指導までに準備する必要書類

実施指導までに準備する必要書類は介護保険施設等運営指導マニュアル 別添1 確認項目及び確認文書に記載されています。

介護老人福祉施設において必要な資料を以下にまとめましたのでご参考にしてください。


【個別サービスの質に関する事項】

1.設備及び備品等(第3条、第40条)

  • 平面図


2.内容及び手続きの説明及び同意(第4条)

  • 重要事項説明書(利用申込者又は家族の同意があったことがわかるもの)
  • 入所契約書


3.入退所(第7条)

  • アセスメントシート
  • モニタリングシート
  • 施設サービス計画
  • 入所検討委員会会議録


4.サービス提供の記録(第8条)

  • サービス提供記録
  • 業務日誌
  • モニタリングノート


5.指定介護福祉施設サービスの取扱方針(第11条、第42条)

  • 身体拘束等廃止に関する(適正化のための)指針
  • 身体的拘束等の適正化検討委員会名簿
  • 身体的拘束の適正化検討委員会議事録
  • (身体的拘束等がある場合)入所(入居)者の記録、家族への確認書


6.施設サービス計画の作成(第12条)

  • 施設サービス計画(入所(入居)者又は家族の同意があったことがわかるもの)
  • アセスメントシート
  • サービス提供記録
  • モニタリングシート


【個別サービスの質を確保するための体制に関する事項】

1.従業者の員数(第2条)

  • 勤務実績表/タイムカード
  • 勤務体制一覧表
  • 従業者の資格証


2.受給資格等の確認(第5条)

  • 介護保険番号、有効期限等を確認している記録等



3.利用料等の受領(第9条、第41条)

  • 請求書
  • 領収書


4.入所者の入院期間中の取扱い(第19条)

  • サービス提供記録/業務日誌


5.緊急時等の対応(第20条の2)

  • 緊急時対応マニュアル
  • サービス提供記録


6.管理者による管理(第21条)

  • 管理者の雇用形態が分かる文書
  • 管理者の勤務実績表/タイムカード


7.運営規程(第23条、第46条)

  • 運営規定


8.勤務体制の確保等(第24条、第47条)

  • 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書
  • 研修計画、実施記録
  • 方針、相談記録



9.業務継続計画の策定等(第24条の2)

  • 業務継続計画
  • 研修及び訓練計画、実施記録



10.定員の遵守(第25条、第48条)

  • 業務日誌・国保連への請求書控え


11.非常災害対策(第26条)

  • 非常災害時対応マニュアル(対応計画)
  • 運営規程
  • 避難・救出等訓練の記録
  • 通報、連絡体制
  • 消防署への届出
  • 消防用設備点検の記録


12.衛生管理等(第27条)

  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための対策を検討する委員会名簿、委員会の記録
  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針
  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修の記録及び訓練の記録


13.秘密保持等(第30条)

  • 個人情報同意書
  • 従業者の秘密保持誓約書


14.広告(第31条)

  • パンフレット/チラシ


15.苦情処理(第33条)

  • 苦情の受付簿
  • 苦情者への対応記録
  • 苦情対応マニュアル


16.事故発生の防止及び発生時の対応(第35条)

  • 事故発生の防止のための指針
  • 事故対応マニュアル
  • 市町村、家族等への報告記録
  • 再発防止策の検討の記録
  • ヒヤリハットの記録
  • 事故発生防止のための委員会議事録
  • 研修の記録
  • 担当者を設置したことが分かる文書


17.虐待の防止(第35条の2)

  • 委員会の開催記録
  • 虐待の発生
  • 再発防止の指針
  • 研修及び訓練計画、実施記録
  • 担当者を設置したことが分かる文書

出典:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル 別添1 確認項目及び確認文書


注意点として、用意すべき書類は自治体や施設の種類によっても異なります。

通知文や対象地域の発信している情報をしっかりと確認するようにしましょう。


実地指導で必要書類は過去何年分必要?

通常は2年程度の書類提示を求められるのが一般的です。

しかし、こちらも自治体によって異なる場合もあります。

詳しくは行政から通知される「お知らせ」を確認しましょう。

通知には具体的にどの年度の書類を準備するかについても記載されています。


実地指導の場所を確保する

実地指導の際には専用の場所を確保するようにしましょう。

これには行政の職員に不必要な注意を払わせないようにするメリットがあります。


多くの書類がある事務室での作業は、確認する予定がなかった資料の閲覧を求められる場合もあります。

準備していなかった書類の不備などがあり、問題になってしまう可能性もあります。

落ち着いた場所で対応するためにも、別スペースの確保を検討しましょう。


参加する職員に内容を共有する

ここまでの準備ができたら、最後に参加する職員へ情報共有しましょう。

いくら細心の注意を払って準備してきても、それが共有できていないと意味はありません。


自分ではすベてが理解できていたとしても、質問された職員が回答できないと

  • 普段から情報共有ができていないのではないか
  • 実地指導のために直前に準備しただけでないのか


など不信感を持たれてしまう可能性もあります。

そうならないためにも、参加する職員に実地指導当日の内容を共有するようにしましょう。


実地指導当日のスケジュール

実地指導当日の標準的なスケジュールを紹介します。

介護事業所の実地指導では、管理者を「1名以上」余裕をもって配置しておくことをオススメします。

書類の確認などでは、3名程度の利用者が選出され、確認項目・確認文書を用いて確認が行われます。

当日のイメージを理解するためにも具体的なスケジュールを確認していきましょう。

【実地指導】

  • サービスの質に関する確認(介護サービスの実施状況指導)
  1. 個別の利用者を通じた確認、利用者の生活実態の把握
  2. 施設設備の確認
  3. サービスの質を確保する体制に関する確認


【最低基準等運営体制指導】

  • 報酬請求に関する確認(報酬請求指導)
  1. 加算及び減算に係る考え方:
    加算時の請求に当たっての基本的な考え方を確認する。
  2. 加算及び減算の実施状況:
    加算時の請求種類等の状況を確認する。
  3. 加算及び減算の請求の内容:
    各種加算時の請求をしているものについて関係書類等により施設・事業所側から説明を受ける。
  4. 加算を実施したことによる効果について説明を受ける。
  5. 基本報酬について確認を受ける。


  • 結果の伝達
  1. 施設・事業所の取組の良い点を伝える。
  2. 指導・指摘事項や過誤調整がある場合は、その報告と今後の流れについて伝達する。

出典:厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル


実地指導でよくある指摘事項

実地指導は介護保険施設等 運営指導マニュアルを読み込んで対応していれば問題ありません。

しかしながら、マニュアルの量は膨大で見落としなどが起きてしまう可能性もあります。

そこで、実際の実地指導でよくある指摘事項をまとめました。

まずはこれから記載する内容の漏れがないように準備を進めていきましょう。


設備について

事業所内の設備について指摘されることがあります。

衛生面について入念にチェックされることが多いので、実地指導の前には再度確認しましょう。


具体的な内容としては

  • 清潔なものとそうでないものが区別されているか
  • 感染症予防は万全か
  • 常備品の保管方法が適切であるか

などがあります。


もちろん安全対策である避難経路や火災対策についても細かくチェックされます。

何が起こったとしても対応できる設備であるかの確認をしていきましょう。

重要事項・重要書類について

利用者の情報が記載されているような重要事項・重要書類の保管に関しても指摘される場合があります。

個人情報保護の観点から、利用者の情報が記載されている書類が誰でもみられる場所に置いてあるのは問題になります。

鍵付の保管庫を準備して、そこに保管するなどの対処をしましょう。


事業者内の見やすい場所に「運営規定」と「重要事項説明書」が提示されているかどうかも指摘されやすいポイントです。

第三者からみて見やすいポイントか再度確認が必要です。


その他

提供しているサービスの内容によって、さらに細かく設備や書類がチェックされる場合があります。

今まで紹介してきた内容はあくまで全体に共通する項目なので、詳しくは点検票に記載されているものをよく確認するようにしましょう。


設備や書類など日ごろから気をつけるのはもちろんのこと、直前にもう1度確認するようにしましょう。

実地指導の内容を詳しく知らないスタッフが書類の置き場所を間違えたりする可能性もあります。

不備がないかどうかの最終確認をしていきましょう。


スタッフのミスがあった場合は「どうしてそれではいけないのか」そこまで指導することで、実地指導当日を安心して迎えられます。


実地指導に引っかかった場合は?

実施指導に引っかかった場合には、基本的にその場での直接指導が行われます。

しかし、介護給付費の不正請求や利用者に危険が及ぶ可能性がある運営基準違反など悪質な違反と判断された場合は監査に切り替わることがあります。


監査に移行してしまうと詳細の調査が行われ、指定取り消しなどの行政処分が下されることもあるので注意が必要です。

「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」によると、令和3年度に指定取り消しなどの行政処分が下された施設・事業所数は105件でした。


出典:厚生労働省「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料 令和5年3月|総務課介護保険指導室


実地指導当日を不安なく迎えるチェックリスト

ここまで実地指導の内容などを詳しく説明してきました。

ただ、どこまで入念に準備しても不安を消えないかと思います。

そんな場合はチェックリストを参考にしてみてください。


厚生労働省から事業所別のチェックリストが紹介されています。

以下のリンクから確認できます。

出典:厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアルについて


まとめ

この記事では実地指導がどんなものなのかを確認してきました。

実地指導の内容は複雑で一度みただけだと、理解できないことも多いと思います。

通知事項を確認し、分からない点は行政に問い合わせるようにしましょう。

繰り返し記事の内容を確認して、万全の準備で実地指導当日に臨みましょう。



監修者

森永 大樹のプロフィール写真

森永 大樹

エジスト株式会社 代表取締役

2018年大学卒業後、レバレジーズ株式会社に入社し、介護事業部の営業を担当。2020年に退職後、エジスト株式会社を設立し、介護・医療業界特化メディア、採用支援サービスのケアプラを運営する。

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