【元施設長が解説】老人ホームの経営は儲かる?収支の仕組み、破綻するケースなどを徹底解説

この記事では老人ホームの経営について紹介していきます。
「老人ホームの経営って今から始めても大丈夫?」
「経営者はどれくらいの年収がもらえるの?」
「老人ホームを経営する上で必要な基準は?」
こんな疑問がある人はぜひこの記事を読んでください。
読み終わったころには老人ホームの経営について全容が理解できると思います。
最後までご覧ください。
老人ホーム経営は今からでも始めるべき?
老人ホームの経営は今から始めても大丈夫です。
介護施設の需要が高まり、競合が増えつつありますが、それでも儲かる可能性は高いです。
老人ホームの経営は、他の土地活用と比べても収益性が高いことが魅力です。
正しい手順で進めていくことで、安定性の高い収益を得ることができます。
しかしながら、経営破綻をしてしまった場合に多額の返済ローンが残ってしまうというのは事実です。
この記事では経営のデメリットも紹介していますので、参考にしてみてください。
老人ホーム経営が破綻するケース
老人ホームの需要は今後も増えていくことが予測されます。
しかし、現在でも経営が破綻してしまうケースも起こっています。
具体的に何が原因で経営破綻が起こってしまうのか、具体的な内容を紹介していきます。
経営がうまくいかないケースでは、次のような理由があります。
・施設の魅力がなく、利用者が集まらない
・職員の離職率が高い
・事業拡大を行ったが、上手く行かない
・周辺地域からの評判が悪い
・人手不足で業務が回らない
最初は大きな問題でないことでもそれが積み重なり、修正困難になる場合もあります。
小さな問題でもその都度解決していくことが重要です。
老人ホームの経営における収支の仕組み
老人ホームの経営では、主な収入源が月額利用料になります。
一方で、支出は初期投資費用と管理費用がかかってきます。
その他にもさまざまな収支がありますので、項目と金額を確認していきましょう。
在宅型有料老人ホームを例に紹介していきます。
老人ホーム経営の収入
まずは収入からです。(表に記載したものは収入の一部になります。)
項目 | 平均費用 |
居住費・家賃収入 | 1149万3560円 |
食費収入 | 841万9984円 |
共益費・管理費・光熱水費収入 | 659万6715円 |
上乗せ介護料収入 | 548万7211円 |
生活サービス料収入 | 61万2724円 |
出典:厚生労働省「高齢者向け住まいにおける経営実態の把握のあり方に関する調査研究事業 報告書」
収入の居住費・家賃収入における割合は高く、28.9%という結果が出ています。
満室にすることが、どれだけ収益の面で重要になるかということが分かると思います。
老人ホーム経営の支出
次は支出を確認していきます。(表に記載したものは支出の一部になります。)
項目 | 平均費用 |
人件費 | 2470万289円 |
共益費・管理費・光熱水費収入 | 317万6453円 |
給食材料費 | 381万4930円 |
職員採用経費 | 7万427円 |
広報費・入居者募集経費 | 43万9899円 |
建物及び建物付属設備減価償却費 | 323万98144円 |
出典:厚生労働省「高齢者向け住まいにおける経営実態の把握のあり方に関する調査研究事業 報告書」
人件費における割合が高く、48.9%という結果が出ています。
支出は物価上昇などによって、急増する可能性が高いです。
定期的に経費の見直しなどしていくことをおすすめします。
老人ホーム経営者の年収
残念ながら老人ホーム経営者の年収に関する統計データはありません。
しかし、一般的には400〜1,000万円程度といわれています。
一般企業の経営者と比較すると、年収も少なめではあります。
大きな上限が決まっている業態であるため、そこから増やそうと思っても難しいです。
老人ホームの種類
老人ホームにはいくつか種類があります。
それぞれ特徴を理解し、どんなサービスを提供していきたいか検討していきましょう。
ここでは民間で開業できる老人ホームについて解説していきます。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、介護を必要とする高齢者が生活の支援を受けながら生活する施設です。
食事の提供や入浴・排泄などの介護を提供します。
有料老人ホームは提供するサービスによって以下の3つに分類されます。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
それぞれに特徴について詳しく紹介していきます。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、生活支援が必要な方が介護を受けながら生活することができます。
介護スタッフが24時間体制で常駐しており、適切な介護サービスを受けられます。
また、施設内で社会交流やレクリエーションも行われたりします。
住宅型有料老人ホーム
在宅型有料老人ホームは、高齢者が自立した生活を送るために提供される施設です。
食事や洗濯、洗濯などの生活支援や見守り、緊急時の対応サービスが受けられます。
介護スタッフは常駐していますが、介護サービスの提供がないといった特徴があります。
そのため、介護サービスを使用する際は外部の事業所と別途契約する必要があります。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、介護を必要としない自立した高齢者が生活する施設です。
- 一人暮らしに不安がある
- 他の入居者と楽しい生活を送りたい
そんな人たちに適した施設になっています。
介護サービスの提供はありませんが、生活支援サービスは受けることができます。
要介護になった場合は退去が必要です。
グループホーム
グループホームは認知症の方が少人数で生活する施設になります。
認知症の進行予防を目的に、家事など行うといった特徴があります。
施設規模としては小規模となるため、建築費の初期費用を抑えることもできます。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリーの賃貸住宅です。
生活の自由度が高く、居住者が安否確認や生活相談のサービスを受けることができます。
一般的には「サ高住」と言われたりしています。
一人暮らしや高齢者ご夫婦などで生活に不安を感じる方が対象です。
老人ホーム経営のメリット
老人ホーム経営のメリットとしては以下の3つが挙げられます。
- 収益が安定している
- エリアの候補地が多い
- 補助金で初期費用が抑えやすい
それぞれについて詳しく解説していきます。
収益が安定している
老人ホーム経営の一番のメリットは収益が安定しているということです。
入居が決まると他の施設に移ることが比較的少ないため、安定した収益を得ることができます。
また、待機中の高齢者も多く、空きが出たとしてもすぐに満室になる可能性が高いです。
エリアの候補地が多い
老人ホームはエリアの候補地が多いこともメリットになります。
商業施設などは交通の便の良し悪しによっても収益が変わってきます。
しかし、老人ホームは居住地であるため、交通の便によって収益はほとんど変わらないのです。
駅から離れていて、土地として人気が少ない地域であっても候補地になり得るのです。
他の施設での運用が難しくても、老人ホームとして運用できることも多くあります。
総量規制対象施設である
老人ホームのうち、介護付き老人ホームは総量規制対象施設になっています。
これは自治体単位で老人ホームの総数を調整するための制度です。
自治体で開業できる介護付き老人ホームの総数が決まっているため、入居者が配分されて収益が得られないといった心配がなくなります。
この結果、安定した経営が行いやすいというメリットがあります。
老人ホーム経営のデメリット
老人ホーム経営のデメリットとしては以下の3つが挙げられます。
- 返済に時間がかかる
- 土地の転用がしにくい
- 介護事業者を見つけるのが難しい
それぞれについて詳しく解説していきます。
返済に時間がかかる
老人ホームは初期投資(土地代、建設費、設備・備品など)に3億円程度かかります。
多額であるため、借用期間が長く、返済に時間がかかる可能性があります。
収益の安定はしやすいですが、そういったデメリットがあるんです。
土地の転用がしにくい
老人ホームは駅や商業施設などから離れた場所にあることが多いです。
そのため、倒産した場合に土地を転用することが困難です。
駅近くなど交通の便が良いところであれば土地の再利用もできますが、立地的にそうはいきません。
また、建物が特徴的な構造をしているため、他の用途に利用することも難しいです。
次の事業者が見つからない場合は多額のローンだけが残る可能性もあります。
介護事業者を見つけるのが難しい
老人ホームの多くは事業者に運営を委任したりしています。
そのため、安定した経営を行っていくためには優良な介護事業所を探す必要があります。
しかし、優良な介護事業所というのは人気も高く、見つけるのが難しいです。
経営を検討している場合は、介護事業所を見つけてから行動に移していくのが良いでしょう。
老人ホームを経営するために必要な基準
老人ホームを経営するためには職員配置や設備に関してさまざまな基準があります。
具体的にどんな基準があるのか、詳しく紹介していきます。
職員配置の基準
老人ホームでは適切なサービスが提供できるように、職員配置の基準が決められています。
介護付き有料老人ホームでは、介護保険法に基づき、以下のような基準が設定されています。
生活相談員 | 常勤1人以上 |
看護職員または介護職員 | 要介護・要支援の利用者数に対して3:1以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上(兼務可) |
計画作成担当者 | 1人以上(兼務可) |
管理者 | 専従(支障がなければ兼務可) |
この職員配置に満たない場合は介護付き有料老人ホームの経営ができません。
開業をする前に人員確保が可能かあらかじめ検討しておきましょう。
一方で、住宅型有料老人ホームでは職員配置に関する基準は特にありません。
自治体によっても異なる場合がありますので、詳しくは各自治体HPをみることをおすすめします。
設備や備品の基準
有料老人ホームを開設するにあたって、以下のような設備基準もあります。
【介護居室のある区域に準用される部分】
①廊下の幅は、片廊下1.8m以上とすること。
中廊下の幅は、2.7m以上とすること。
一定の用件(※1)を満たす場合、廊下幅員を片廊下1.4m、中廊下の幅は1.8mとする。
②廊下、便所その他必要な場所には常夜灯を設けること。
③廊下および階段には手摺を設けること。
④階段の傾斜は緩やかにすること。
⑤居室等が2階以上の階にある場合は、1カ所以上の傾斜路を設けること。
ただし、エレベーターを設ける場合はこの限りではない。
※1)居室面積18m²以上、トイレ・洗面設備付=高齢者向け優良賃貸住宅並み
また、以下の設置が義務付けられています。
- 便所
- 浴室・脱衣所
- 事務室
- 洗面設備
- 機能訓練室
- 洗濯室
- 食堂・談話室
- 汚物処理室
- 医務室または健康管理室
- 介護・看護職員室
- ナースコール
- 緊急通報装置
- スプリンクラー
解説する際は不備がないか、入念に確認するようにしましょう。
運営の基準
有料老人ホームの運営基準に関しては厚生労働省から以下の内容が示されています。
1.管理規程の制定
2.名簿の整備
3.帳簿の整備
4.個人情報の取り扱い
5.業務継続計画の算定等
6.非常災害対策
7.衛生管理等
8.緊急時の対応
9.医療機関等との連携
10.介護サービス事業所との関係
11.運営懇談会の設置等
より詳しい内容が知りたい方は以下の資料を確認してください。
出典:厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」
老人ホーム経営までの流れ
実際に老人ホームの経営を考えた場合にどのような準備が必要なんでしょうか?
この章では老人ホーム経営までの主な流れを紹介していきます。
老人ホーム経営までの大まかな流れは以下の通りです。
1.自治体の担当者と相談する
2.都道府県の指針に基づき審査を受ける
3.法人の設立(審査合格後)
4.有料老人ホーム設置届の提出
5.建設工事の開始
6.経営開始
まずはじめに自治体担当者との相談を行います。
設置予定地に関する法令や介護保険事業計画上の調整など専門的な知識が必要になるため、相談を繰り返し、入念な計画を立てていきます。
自治体担当者との相談が済んだら都道府県に申請を行い、指針に基づいた審査を受けることになります。
審査合格後は法人の設立、有料老人ホーム設置届の提出を行い、建設工事に移ります。
この作業に併行して備品の調達と人員確保を進めていく必要があります。
審査などに時間がかかる場合もあるので、余裕をもった準備が必要です。
老人ホーム経営の将来性
老人ホームの必要性は高齢化が進む日本では今後も増えてくるでしょう。
令和3年版高齢者白書では、現在日本の高齢者が占める割合は28.8%と公表されました。
令和18年には33.3%まで増えていくと予想されています。
老人ホームの必要性は今後も増加していきます。
しかし、それと同時に人手不足と診療報酬の低下も同時に進んでいくことが想定されます。
今後は他と同じ取り組みをしているだけでなく、自施設独自の取り組みも必要になってきます。
老人ホームの経営を考えている場合は、広い視点を持って検討していくようにしましょう。
まとめ
ここまで老人ホームの経営について解説してきました。
老人ホームの現状や経営するために必要なことなどは理解できたでしょうか?
介護業界の需要は今後も高まってくると思いますが、人手不足や財源の減少などさまざまな問題が起こっているというのも事実です。
リスクを考慮した上で、老人ホームの経営をするかどうか検討していきましょう。


