訪問介護は一人で開業できる?人員の要件と必要な費用を解説

この記事では一人で訪問介護を開業することができるのかどうかについて紹介していきます。
「訪問介護の開業は一人でできるもの?」
「訪問介護の開業に必要なものは?」
「訪問介護の開業でよくある失敗例は?」
こんな疑問がある人はぜひこの記事を読んでください。
読み終わった頃には訪問介護の開業について理解でき、今から取り組むべきことがわかります。
最後までご覧ください。
訪問介護の開業は一人ではできない
残念ながら訪問介護の開業は一人ではできません。
なぜなら、訪問介護サービスを提供するために必要な職員数が決められているからです。
厚生労働省の資料では以下のように説明しています。
訪問介護職員等 | 常勤換算方法で2.5以上 |
サービス提供責任者(※) | 介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修修了者、 |
※サービス提供責任者の業務 | |
管理者 | 常勤で専ら管理業務に従事するもの |
出典:厚生労働省「訪問介護」
サービス提供責任者は、管理職や訪問介護職員を兼務することが認められています。
しかし、管理者と訪問介護職員を一緒に兼務することはできないのです。
この時点で少なくとも2名は必要です。
また、訪問介護職員も常勤換算方法で2.5以上必要であるため、開業には更に人数が必要になります。
訪問介護の開業に必要な3つの基準
訪問介護を開業するためには、3つの条件を満たす必要があります。
- 人員の基準
- 設備・備品の基準
- 運営に関する基準
それぞれについて詳しく解説していきます。
人員の基準
1章「訪問介護の開業は一人ではできない」でも紹介しましたが、開業には人員基準があります。
- 訪問介護職員
- サービス提供責任者
- 管理者
以上、3つの職種が適切な人数で配置されている必要があります。
訪問介護職員は、常勤換算で2.5名以上必要です。
資格としては
- 介護福祉士
- 介護職員初任者研修終了
- 実務者研修終了
- 訪問介護員養成研修1級課程・2級課程(H25.3で研修終了)
- 介護職員基礎研修終了(H25.3で研修終了)
などがあります。
サービス提供責任者は利用者数に応じて必要数が異なってきます。
利用者 | サービス提供責任者 |
40名 | 1人 |
41-80名 | 2人 |
81-120名 | 3人 |
人員の基準は、訪問介護を一人では開業できない大きな原因になります。
設備・備品の基準
訪問介護の開業のためには設備・備品の基準も満たす必要があります。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準では以下の内容が記載されています。
第七条 (設備及び備品等)
指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けるほか、指定訪問介護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。
出典:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
横浜市のガイドラインを参考に詳細を説明していきます。
訪問介護事業所に必要な設備としては
- 事務室
- 相談室
- 手指消毒設備
- 鍵付書庫
- 電話
- FAX
- コピー機
- パソコン
が挙げられています。
事務室や相談室に関しては広さや机の数など更に細かい設備条件が決められています。
出典:横浜市健康福祉局介護事業指導課「居宅サービス事業等における設備等ガイドライン」
自治体によってルールが異なる場合がありますので、一度確認するようにしましょう。
運営に関する基準
訪問介護の開業にあたって運営に関する基準もあります。
都道府県によっても内容が異なることがあるため、一部を紹介します。
この基準は多岐にわたり、自治体によっても内容が異なることがあるため、一例をご紹介します。
- サービスの提供内容と手続の説明および同意
- サービス提供拒否の禁止
- サービス提供が困難になった時の対応
- 利用料などの受領方法
- 身分を証する書類の携行
- 訪問介護計画書の作成
- 利用者に関する市町村への通知
- 設備や備品などについての衛生管理
- 訪問介護員の健康管理や設備
- 同居家族へのサービス提供は行わないこと
- 緊急事態への対応が整備されていること
- 介護等の総合的な提供
開業後は実績書類を作成し、事業所への掲示と保管が必要です。
訪問介護を開業するまでの流れ
実際に訪問介護を開業する場合の流れを紹介していきます。
流れとしては以下の通りです。
- 法人格の取得
- 物件や設備の準備
- 人員の確保
- 指定申請
それぞれについて詳しく解説していきます。
法人格の取得
個人事業主では訪問介護の開業が難しいため、法人を立ち上げる必要があります。
介護サービス事業所における指定拒否の要件として「法人でないとき」と記されています。
法人といってもいくつか種類があります。
- 株式会社
- 合同法人
- NPO法人
それぞれに特徴がありますので、表で確認してみてください。
法人の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
株式会社 | 営利目的の会社形態 | 社会的信用が高い | 設立費用が高い |
合同会社 | 営利目的の会社形態 | 設立費用が安い | 社会的信用が低い |
NPO法人 | 非営利目的の会社形態 | 設立費用が安い | 必要役員数が多い |
気軽に開業したいと考えている方は合同会社、事業を拡大させたいという人は株式会社が適しています。
物件や設備の準備
訪問介護を開業するためには設備基準として事務室などが必要になります。
そのため、開業までに物件や設備の準備が必要になってくるんです。
また、訪問介護では移動手段が必須です。
開業してから困らないように早めから自転車やバイク、自動車の準備が必要になるでしょう。
人員の確保
人員も訪問介護を開業する基準の一つであるため、欠かすことはできません。
2章「人員の基準」で説明しましたが、訪問介護では
- 訪問介護職員
- サービス提供責任者
- 管理者
の配置が必要になります。
開業直前に資格者を募集しようとしてもなかなか集まりません。
自身で資格を取得しておくか、早めからの人員確保を目指しましょう。
こちらも詳細は後述しますが、訪問介護には「人員基準」というものが定められており、管理者とサービス提供責任者、訪問介護員の3つの役職の人数が最低でも3名は必要になります。これらの役職には資格要件があり、介護福祉士などの資格保有者を確保しなければいけません。
また、訪問介護は利用者と直に接する仕事なので、どんな人とも上手く接することができるコミュニケーション能力や臨機応変に対応できる力などが求められます。
資格保有者というだけでなく、訪問介護に適した人材であるかという点にも注意して採用を進めることが大事です。
指定申請
訪問介護を開業するには、厚生労働省から訪問介護事業者としての指定を受けなければいけません。
指定申請には以下の書類が必要で、審査を受ける必要があります。
- 訪問介護事業の認定申請書
- 登記簿謄本
- 決算書や貸借対照表、事業計画書
- 従業員の雇用契約書や履歴書、資格証の写し
- 訪問介護事業所の図面や写真
- 運営規定
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 誓約書及び誓約書別紙
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
申請が審査に通ると、6年間は事業者として認められ、サービスの提供ができるようになります。
訪問介護を開業するのに必要な資金
訪問介護を開業するためには多くの資金が必要です。
具体的にどんなところで資金が必要なのか紹介していきます。
開業前と開業後に必要な資金を分けましたので、参考にしてみてください。
開業前に必要な資金
開業前に必要な資金は以下の通りです。
- 法人設立費用
- 物件の取得費用
- 設備・備品の購入費
それぞれについて紹介していきます。
法人設立費用
法人設立に係る費用として、登録免許税や収入印紙、定款の認証手数料などが必要です。
それらを合わせて、株式会社で約25万円、合同会社で約10万円の費用がかかります。
物件の取得費用
事業所として使用する物件の取得費用がかかります。
賃貸で契約する場合は、
- 物件の契約料
- 敷金
- 礼金
- 保証金
- 開業日までの家賃
などが物件の取得にかかる費用になります。
立地などによって異なりますが、30〜100万円ほどは見込んでおきましょう。
自宅を事務所として使用する場合は費用を抑えることができます。
その場合は、設備に対する基準を満たしているか注意が必要です。
設備・備品の購入費
訪問介護事務所を運営するために必要となる備品の購入費用です。
備品としては、
- 電話機やFAX
- パソコン
- プリンターやコピー機
- 鍵付き書庫
- 事務デスク
- イス
- 事務用品
などが必要になります。
移動手段として車両が必要な場合は、新車で100〜200万円程度プラスでかかります。
開業後に必要な資金
開業後に必要な資金は以下の通りです。
- 人件費
- 家賃や駐車場代
- その他の経費
それぞれについて紹介していきます。
人件費
従業員を雇う費用として人件費がかかります。
常勤(日勤)介護職員の給料相場は31万4,590円とされており、人数によって変わってきます。
介護報酬は翌月請求で支払いが翌々月なので、人件費2~3か月分はあらかじめ用意しておきましょう。
家賃や駐車場代
事務所を賃貸している場合は、契約費用以外に家賃がかかります。
また、駐車場を借りている場合は駐車場代も必要です。
その他の経費
訪問介護の開業後はさまざまな経費がかかります。
- 光熱費
- 電話料金
- 通信費
- 消耗品費
- 広告費
- 交通費
などが発生します。
「開業してから資金不足」なんてならないように計画的な資金準備をしましょう。
訪問介護を開業するのに利用できる融資
ここまで訪問介護を開業するのに必要な資金を確認してきました。
訪問介護の開業には法人設立費から事業所代まで多くの費用が必要です。
もし開業を考えている場合は、資金調達を検討していきましょう。
2つの方法を紹介していきます。
金融機関
銀行や信用金庫などから融資を受けることができます。
注意点としては審査が少し厳しめであり、はじめて融資を受ける方は審査に落ちることもあります。
融資の種類としては大きく2つあります。
- 信用保証付き融資
- プロパー融資
信用保証付き融資:
返済が滞った場合に信用保証協会が金融機関に「立て替え払い」を行う融資制度です。
所定の信用保証料の支払いが義務となるデメリットもあります。
プロパー融資:
保証人なしで100%の責任を負う融資制度です。
審査が厳しくなりやすいという特徴があります。
自身の状況に合わせて選ぶようにしましょう。
日本政策金融公庫
はじめて融資を受けるという人は審査が通りやすい日本政策金融公庫がおすすめです。
日本政策金融公庫の融資制度としては以下の2つがあります。
- 新創業融資制度
- 新規開業制度
新創業融資制度:
新たに事業を始める方や事業開始後税務申告2期を終えていない方を対象としています。
保証人や担保なしで上限3,000万円の融資を受けることができます。
新規開業制度:
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象としています。
保証人や担保なしで最大7,200万円の融資を受けることができます。
金融機関の融資が通らなかった方や低金利でお金を借りたい人におすすめです。
自治体によっては補助金や助成金制度があることもあります。
融資を考える前に一度確認してみましょう。
訪問介護の開業に失敗しやすい原因と対策
訪問介護の需要が高まっていますが、その一方で開業に失敗するケースも増えてきています。
失敗する原因として以下の3つが挙げられます。
- 開業資金の不足
- 人員不足
- 営業力の不足
それぞれについて詳しく解説していきます。
また解決策についても記載していますので、参考にしてみてください。
開業資金の不足
訪問介護の開業には「訪問介護を開業するのに必要な資金」でも述べたように大きな資金が必要です。
開業エリアや規模にもよりますが、500〜1000万円程度かかります。
事前に必要資金を計算して集めていたとしても、採用費など思わぬ経費がかかる可能性もあります。
その結果、開業後の資金繰りが上手くいかず、経営困難になるということは珍しくありません。
また、異業種から訪問介護事業所を立ち上げた場合、採用や営業活動に苦戦する方も多く、採用や新規利用者獲得のための広告費が膨れ上がってしまうことも珍しくありません。
銀行や信用金庫からの融資はもちろんですが、開業前には十分に必要資金を確認するようにしましょう。
人員不足
人手不足も訪問介護の開業でよくある失敗の原因になります。
訪問介護では利用者の介護をすることで収益を得ます。
介護職員の人手不足ではサービスを提供することができず、収益を得ることもできないのです。
例え、職員を増やすことができたとしても、離職率が高い業界ですので長続きするかは分かりません。
新たな職員を募集しようと思っても業界全体が人手不足であるため、なかなか人が集まらないのです。
対策としては
- 働きたいと思えるような給料や福利厚生を設定すること
- 離職率を下げるような働きやすい職場をつくること
が重要になってきます。
営業力の不足
営業力の不足で訪問介護の開業に失敗するケースも多いです。
訪問介護の開業を考える人も多く、競争が激しくなってきています。
営業が上手くいかないとサービス利用者が集まらず、訪問介護を継続することができません。
訪問介護が開業したことを知ってもらえるように積極的な営業が必要になります。
他のサービスにはなく、自社特有の強みを提示することで利用者獲得につながります。
訪問介護の将来性
最後に訪問介護の将来性について紹介していきます。
訪問介護の倒産率と必要事業者数を参考にしながら、確認していきましょう。
訪問介護の倒産率
株式会社東京商工リサーチの調査結果によると、2023年の「訪問介護事業者」の倒産が12月15日までに60件に達し、これまで年間最多だった2019年の58件を抜き、年間最多を更新したことが分かりました。
訪問介護の倒産率は増えてきているのです。
またこの原因としては
- ヘルパー不足
- 物価高
- 競合の激化
を挙げています。
物価高に対して対策は難しいですが、「ヘルパー不足」や「競合の激化」は対処可能です。
どちらに対しても介護事業所の強みを宣伝していくことで解決することができるでしょう。
出典:株式会社東京商工リサーチ「2023年の「訪問介護事業者」倒産が 60件に急増 ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新」
訪問介護の必要事業者数
訪問介護事業所の倒産率は増えてきていますが、それでも訪問介護の必要性は増加すると考えられます。
高齢化の進行や介護保険制度の改正などがその要因として挙げられるでしょう。
内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上と更に高齢化は進むとされています。
それに伴い訪問介護の必要性が高まる可能性があります。
介護業界は競合が増え続けていることには変わりありませんので、強みを活かした訪問介護の開業を行っていく必要があります。
まとめ
訪問介護の開業は一人ですることができません。
これは、訪問介護における人員配置が影響してくるからです。
実際に人が集まったとしても資金などの問題があり、開業できるかは分かりません。
もしも訪問介護を開業する場合は入念な計画を立てた上で行うようにしましょう。


