10年後の介護業界はどうなる?現役施設長が予測と対策を解説

この記事では予測される10年後の介護業界について解説していきます。
「10年後の介護業界はどうなっているの?」
「国はどんな取り組みを行っているの?」
「今から取り組むべき対策は?」
こんな疑問がある人はぜひこの記事を読んでください。
読み終わったころには10年後の介護業界についての理解が深まると思います。
ぜひ最後までご確認ください。
10年後の介護業界はどうなっている?
介護業界は、今後10年で大きな変化を迎えることが予想されています。
2025年には団塊の世代が75歳以上に到達し、日本の少子高齢化はさらに進行していきます。
介護サービスの必要性は大幅に増加し、介護人材の供給が追いつかない可能性が出てくるでしょう。
この章では10年後の介護業界が具体的にどうなっていくのか紹介していきます。
深刻な人手不足が続いている
現在でも介護業界は深刻な人手不足に陥っています。
厚生労働省の資料によると、
- 2026年度には約25万人
- 2040年度には約57万人
の介護人材不足が起こるとされています。
それに対して介護職員の必要性はますます高まることが予想されており、労働力の供給と需要のミスマッチが起こる可能性が高いです。
出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について 別紙1」
成長産業であることには変わりない
一応、介護業界が成長産業であることに変わりはありません。
高齢化社会が進んでいますので、介護サービス市場は拡大の一途をたどっています。
また、AIやロボティクスなどの新技術が介護分野に導入されることで業務の効率化やサービスの質の向上が期待されています。
介護業界は引き続き成長を続け、社会に重要なものとなっていくでしょう。
人手不足以外に10年後の介護業界で起こること
今後の介護業界における一番の問題は人手不足です。
しかし実際はいくつもの問題があり、複雑に絡み合って大きな問題になってしまいます。
この章では人手不足以外で10年後の介護業界に起こることを紹介していきます。
- 介護事業所の倒産増加
- 介護難民の増加
- 介護職員の高齢化
介護事業所の倒産増加
介護事業所の倒産数は増加しています。
株式会社東京商工リサーチの調査によると、2024年(1−5月)における通所・短期入所介護事業所の倒産は22件であり、すでに上半期ベース(1−6月)過去最多の18件を上回っています。
この原因としては人手不足や物価高の影響が大きいと考えられています。
出典:株式会社東京商工リサーチ「2024年1‐5月の「介護事業者」の倒産 72件に急増 上半期の過去最高を上回る、深刻な人手不足と物価高」
これらはすぐに解決できる要因ではないため、今後も倒産数は増えていくことが予測されます。
介護業界を盛り上げていくためには事業所の倒産を食い止める必要があります。
介護事業所の倒産が増加している原因をもう少し詳しく解説していきます。
物価高
海外情勢や円安の影響により物価高が起こっています。
光熱費や物品の購入のコストが増加するため、経営が厳しくなる介護事業所が増えてきているのです。
一般の企業であれば、サービス料金を上げることで対応も可能です。
しかしながら、介護業界はそういった取り組みもできず、倒産の可能性が高くなってしまいます。
事業所としては介護業界が人手不足でありながらも、採用を増やし、収益を上げる取り組みが必要です。
介護報酬改定
診療報酬の改定により、経営が苦しくなる事業所も増えてきています。
介護事業所の収益は介護報酬に大きく依存しています。
もちろん介護報酬改定で基本報酬が引き上げられたら、収益は上がりやすくなります。
しかし、実際は基本報酬の引き下げが行われることも多いです。
ギリギリの経営を行っていた事業所などでは経営が立ち行かなくなってしまいます。
人員不足
倒産を防ぐためには収益を増やしていく必要があります。
そのためには介護職員を増やし、対応可能な利用者数を増やしていく必要があります。
しかし、介護業界は人手不足であり、介護職員を増やすことは容易ではありません。
採用を増やそうとしても、なかなか集まらず、余計に採用コストがかかってしまう場合もあります。
経営が上手くいかなくなり、倒産してしまう事業所も多いです。
介護難民の増加
介護難民の増加は現在でも大きな問題となってきています。
今後もますます増加していくことが予測されます。
介護難民とは介護サービスを受けたくても受けられず、困っている人を指します。
在宅での介護を受けられないだけでなく、介護施設へも受け入れてもらえない状況が増えてきています。
介護難民が増加している原因としては、以下の内容が考えられています。
- 高齢者の急激な増加
- 介護人材の不足
- 核家族化に伴う老老介護や認認介護の増加
ここでも介護人材の不足というのは大きな問題になってきます。
介護職員の高齢化
今後は介護職員の高齢化が起こっていくとされています。
ある調査では介護職員の平均年齢が現在であっても50歳という結果も出ています。
介護職は体を使う業務も多く、年齢とともに身体的な負担も増えていきます。
人手不足の影響でさらなる負担がかかり、体を壊してしまう人の増加も懸念されています。
また、現在の介護業界を支えている50代の介護職員が退職してしまう数十年後には介護業界全体の人手不足がさらに進行する可能性が考えられます。
20代や30代の介護職員を増やす取り組みが必要です。
10年後の介護業界のために国が行っている取り組み
国は将来さらに深刻になるとされている介護業界の人手不足にさまざまな対策を行っています。
この章では国がどんな取り組みを行っているのか紹介していきます。
大きくは以下の3つです。
- 介護職員の処遇改善
- ICTや介護ロボットの導入
- 外国人介護人材の受け入れ
それぞれについて詳しく解説していきます。
介護職員の処遇改善
介護職員の離職率が高い原因の一つに給料の低さがあります。
専門的なスキルや感受性が求められるにもかかわらず、その対価が十分でないことが多いです。
介護職員の処遇改善に向けて国はさまざまな対策を行っています。
- リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指し、総額2000億円(年)を活用し、経験・技能のある介護職員に重点化した更なる処遇改善を2019年10月より実施
- 介護職員について、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を、2022年2月から実施
出典:厚生労働省「介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について」
一般の企業の賃上げや物価高が進む中で、介護業界における処遇改善に力を入れています。
ICTや介護ロボットの導入
厚生労働省では介護現場によるICT(情報通信技術)の利用を促進しています。
従来の紙媒体での情報のやり取りを抜本的に見直し、ICTを介護現場のインフラとして導入することを求めるという取り組みです。
ICTや介護ロボットを導入することで業務負担の改善につながります。
その結果、働きやすい職場になり、離職率を下げることが考えられます。
介護ソフトや情報端末、通信環境機器等の導入などに補助金を支給したりもしています。
詳しい内容につきましては以下の記事をご参考にしてください。
外国人介護人材の受け入れ
人手不足の対策として外国人介護人材の受け入れを行っています。
日本では今後、さらなる労働生産人口の減少が進んでいきます。
国内だけでは人材不足を補うことが困難であるため、外国人介護人材の受け入れが始まったのです。
2017年には在留資格「介護」が始まり、2019年には特定技能が創設されました。
政府が力を入れていることもあり、外国人介護人材は増え続けています。
10年後に備えて今から取り組むべき対策
国は10年後の介護業界を想定してさまざまな取り組みを行っています。
しかし、10年後に備えるためには各職場での取り組みも重要になってきます。
ここでは職場でどんな取り組みをするべきなのか、人手不足解消に注目して紹介していきます。
- 離職率を減らす取り組みをする
- 職場にあった人材を採用する
- 人材育成に力を入れる
ぜひ確認してみてください。
離職率を減らす取り組みをする
10年後の人手不足を解消するためには、今から職場内の退職者を減らす取り組みをしましょう。
今から離職率が低い職場を目指すことで、10年後も人手不足に困らなくなります。
しかし、何から始めたらいいか分からないという人が多いと思います。
そこで離職率が下がる具体的な対策を紹介していきます。
業務負担を減らす
業務負担の軽減が介護職員の働きやすさにつながります。
介護職員のメインの業務としては利用者の介護です。
それだけでも業務量としては多いですが、その他にも書類作成などをしなければいけません。
これらの業務負担を減らすことで、働きやすい職場へ変えることができます。
介護や書類作成など業務負担はITツールの活用がおすすめです。
なかなか馴染みがないかもしれませんが、最近では多くのITツールが登場しています。
これらの情報を知り、うまく使いこなすことで業務負担は大きく改善します。
書類作成を紙媒体やエクセルで行っているケースでは手間や時間がかかり、負担が増えてしまいます。
その部分をPCや専用ツールに置き換えるだけで業務負担は大きく変わります。
情報共有も行いやすくなるため、インシデント防止にもつながってくるでしょう。
また、見守り支援を行う介護機器などを導入することで過度な緊張も減り、介護負担も軽減されます。
相談窓口を設置する
人間関係の悩みで離職する職員は多く、相談窓口を設けることも有効な対策になります。
問題を抱えたとき、気軽に相談できる窓口があれば、悩みが解消される可能性もあります。
介護労働安定センターの調査によると、介護業界における離職理由の1位が「職場の人間関係に問題があったため」27.5%になっています。
介護職はストレスのある環境の中で多くの職員と関わっていく仕事です。
その中でトラブルなどが起こり、離職してしまうといったことが考えられるかと思います。
他に多かった離職の原因について記載しておきます。
「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」22.8%
「他に良い仕事、職場があったため」19.0%
「収入が少なかったため」18.6%
「自分の将来の見込みが立たなかったため」15.0%
結果だけ確認すると、収入よりも人間関係が理由で離職した人が多いということになります。
離職率を下げるために人間関係に配慮した対策が必要になります。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」p79
誰か1人が抱えている悩みは、多くの人が持っているものです。
情報を集め、対策を立てていくことで労働環境の改善につなげることもできます。
人材育成に力をいれる
職場で成長できるような環境を整えることで、離職を防ぐことができます。
その結果、10年後も人手不足に悩むことなく迎えることができるでしょう。
人材育成のために今から取り組むべき内容について紹介していきます。
キャリアパス制度の整備
介護人材の育成を進めていく上でキャリアパス制度の整備は欠かせません。
職員が自分の将来を見越して計画的にスキルを積み上げられる環境作りに効果的です。
この制度により、自分がどのような道を歩んでいけば昇進が可能であるかを明確にすることができます。
例えば、「介護職員→チームリーダー→介護福祉士→ケアマネージャー」というような明確なキャリアパスを示すことで、職員は自己成長に対する意欲を高めることができます。
また、キャリアパスに沿った研修や資格取得支援を行うことで、職員のモチベーションアップと長期的な定着につながります。
流れがはっきりしているため、見直しの際の修正も行いやすいです。
資格取得の支援を強化する
資格取得支援の強化も人材育成のためには重要です。
介護の仕事は保有している資格によって、行える業務の幅や待遇が異なります。
キャリア形成を支援するために、介護福祉士の資格取得に対するサポートを実施するのが有効です。
現状の介護業界ではキャリア形成ができるという職場が少ないです。
そのため、資格取得支援を行うことで他と差をつけることができます。
介護福祉士だけでなく他の資格や研修費までサポートすることで職員の離職を防ぐことができます。
また「介護職員の取得支援サポートあり」という求職者へのアピールにもなり、キャリアアップの意欲が高い職員の確保にもつながります。
職場にあった人材を採用する
いくら採用に力を入れたとしても、入職した職員が数年で退職してしまっては意味がありません。
そのような採用方法をしている職場は10年後、さらに深刻な人手不足に悩まされるでしょう。
現在人手不足に悩んでいて、早急に職員が必要だとしても採用は慎重に行うべきです。
履歴書や面接で介護人材の人柄や考え方を深掘りしていくことで、長期雇用が期待できます。
長期的な目線で、活躍できる職員かどうか検討して採用を進めるようにしましょう。
まとめ
10年後の介護業界は人手不足の更なる深刻化が予測されます。
その時になって焦っても間に合わない可能性が高いため、今からの対策が重要になってきます。
対策といっても深く考えすぎなくて大丈夫です。
職場での人材育成や離職率を減らす取り組みが結果的に10年後に向けた対策にもなり得ます。
まずは職場内をどうしたらよりよくできるのか、そこから検討していきましょう。


